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レーシングカーの咆哮をZOOMで録音


本物のクルマを運転しているのと同じ感覚を味わってもらうのが、このゲームの究極的ゴール。GRIDシリーズの人気の高さは、エンジン音などの音のクォリティによるところも大きいんです

– Chris Jojo | CODEMASTERS シニアサウンドデザイナー

 

リアルでスリル満点のレーシングゲームシリーズと言えばコードマスターズですが、大人気タイトルの1つだったGRIDが2019年後半に復活しました。GRIDの2年に及ぶ開発期間の最終段階で、コードマスターズ社のシニアサウンドデザイナーであり、サウンドレコーディングエンジニアのチーフとして、フェラーリ365GTB/4 Competizione(別名デイトナ)のサウンドをZOOMレコーダーで収録したChris Jojo氏を取材しました。

GRIDシリーズはタイトルごとに登場するクルマが異なり、最新作ではフェラーリの名車とポルシェGTルマンが登場します。「GRIDに登場するクルマの90%以上はそのクルマと同じ年式やスペックの本物のクルマの音を収録しています」とChrisは誇らしげに語り、さらに、「今回のGRIDの開発が大詰めを迎えた今、やっとレコーディングできるタイミングに巡り会えて、急遽レコーディングをしているところなんです」。

GRIDの発売時に含まれる69台分のクルマと、その後多数のクルマのダウンロード版リリースを抱え、それらすべてをタイトな開発スケジュールの各段階に間に合うように収録対象車の手配からレコーディングまでをこなすのも、Chrisの任務です。これには、フェラーリ330 P4やBMW M1 Procarといった伝説的ヒストリックカーの中でもレア度の非常に高いクルマの走行音などを収録するという、難易度が極めて高いものも含まれていました。

車内でのレコーディングでは、エンジン音や吸気音、マフラーのエキゾーストノートやトランスミッションの操作音など、ドライビングシートで聴こえるあらゆる音を、車内の随所にセットしたマイクでそれぞれ収録し、ゲーム内での効果音として使えるトータルなサウンドセットを作成するのが、Chrisの役目です。「吸気システムの音をハッキリ録っておくのがすごく重要なんです。スーパーチャージャーとかキャブレター、ターボのダンプバルブやタービン音など、クルマによってすべて違いますからね」。他にもシフトノブの操作音やトランスミッションやディファレンシャルの噛みあう音なども、クルマを特定する大きな要素で、ゲームのリアリティに直結しています。

それだけに、どんなレコーディングもゲームの質を左右する決定的なもので、そうした中、Chrisが重視しているのはレコーディング機材の信頼性です。特に、サーキットという厳しい環境で長時間に渡るレコーディングに耐えられる高い耐久性が求められます。「レーシングカーの場合、チームの厚意でマシンのシェイクダウン(テスト走行)時にレコーディグさせてもらえることがよくあるんです。そうした場合には、チームプリンシパル(チーム代表)やリードエンジニアからの厳しい条件をベースに、機材の選定とセット位置が決まっていきます」。



機材の重量や容積が問題になることもよくあり、その点で無駄のないものが車載機材として求められます。「シェイクダウンの日は、RECボタンを叩いたらもうそれっきりということもあります。その場合レコーディング機材は長くて3日間はマシンに取り付けたままになります。その間、機材のセッティングをいじることはできません。チームのエンジニアの邪魔になることはできませんので。ですから機材を信じるしかないんです。その意味でも、機材はどれも頑丈さが必須ですし、場合によっては耐火性も重要ですし、ケーブルが外れてしまうようなことは論外です」。

そんなChris Jojoが信頼を寄せているのが、ZOOM 『F8』と『F8n』マルチトラックフィールドレコーダーです。8トラックレコーディングが可能なこの2台を同期させてエンジン音など主要なサウンドすべてをマルチトラック録音し、車内音はタイムコードで同期したZOOM 『F4』でアンビソニック録音をしています。Chrisは熱っぽく語ります。「『F8』は2015年に登場してからずっと使っています。丈夫で軽量、しかも使いやすいというように、ZOOM製品は私のニーズにちょうど合っているんです。それと『F8n』はヘッドフォンアンプのゲインなども改良されていて、さらに良いですね」。

Chrisの目を惹き付けたのは他にも、『F8n』の-10dBアッテネーターがあります。これはChris自身が「リミッターは使わないんです!」と何度も言及していますが、それは可能な限りピュアなサウンドのままでレコーディングしたいという彼の気持ちがそうさせています。「ダイナミクスをそのまま録ることが重要ですので、車内音のレコーディング時にはそれを注意しながらモニターしています」。

Chrisが付け加えて、「シェイクダウン日と単座のレーシングカーの場合は機材のセット場所の関係で『F8n』のリミッターを使いました。今は『F8n』にすごく満足していますね。インプットの設定を見極めるのが思い通りにできるようになりましたし、アフターファイアの衝撃音や、エンジン回転がレッドゾーンに入ったり、レブリミッターが作動する辺りの大音量に対するセーフガードとして、リミッターを使うことがあると思います」。

Chrisが『F8』と同様に信頼しているのが『H6』です。Chrisが英国外でレコーディングをする場合は『SSH-6』ステレオショットガンマイクを装着し、クルマの通過音を収録しています。英国内ではその役割を『F8』が担当しています。走行音を車外から収録する場合は、『H6』の20dBパッドスイッチを活用しているとのことで、「車外から録るときは20dBで十分ですから、『H6』ではいつも追加で使っている60dBのパッドは使いません」。

コードマスターズのゲームタイトルのためのエンジン音レコーディングを10年以上に渡って行っているChris。レコーディングに使用する機材に対する要求はクリアそのものです。「必要なのは、高音質のプリアンプです。ノイズフロアが低く、クリアな音であること、ヘッドフォンでモニターするのに十分なゲインが稼げること、反応の良いルックアヘッドリミッター、ハイパスフィルターをスイッチでオン/オフできること、軽量コンパクトで操作性の良いものです。ZOOM製品なら、マニュアルに顔を埋めるようにして読まなくては使えない、ということは一切ありませんね。分かりやすくて思った通りに使えますから」。

ChrisはZOOM『F8』と『F8n』の他にもプロ用レコーダーも使用しています。「(プロ用レコーダーとの)音質面での差は無視できるレベルですね。『F8n』のプリアンプは、これまでのZOOM製プリアンプを超える出来です」。インプットから入った音をそのままピュアに録ること、それこそがChrisの求めていることです。「マイクは本当に重要なんですが、それでレコーディングするわけですから、マイク自体が音に余計な色付けをしないことが必須条件です。方程式の右辺と左辺の関係のような感じとでも言いましょうか」。

フェラーリ365GTB4の場合も、これまでレコーディングしてきた他のクルマとまったく同様に、ゲームで使用するエンジン音など各種効果音を作成するのに必要となる走行パフォーマンスをレコーディングするプランを手順通りに進めていきます。NA(自然吸気)の4.4リッターV12エンジンの場合、マイキングは小規模のもので足ります。DPA MMC4007無指向性ラージカプセルマイクをV12エンジンのどちらかのシリンダーバンクに向けて設置し、Shure TwinPlexラベリアマイクでキャブレターの吸気ポートを狙います。エキゾーストパイプが車体の両脇に出ていますので、DPA 4007とShure SM57を2本ずつ使ってその両方を狙います。以上のマイクでエンジンとエキゾーストノートのメイン部分を収録します。「DPA 4007は本当に最高のマイクで、エンジン音やエキゾーストノートを録るならこれで決まりですね。ものすごくクリアな音ですし、オフアクシスの特性にも優れていて、それに何と言っても165dB SPLもの大音圧にも耐えられるんです」。すべてのマイクとケーブルをBespoke製のウィンドプルーフタイプのエンクロージャーと防炎加工シュラウドで保護します。「エンジンやエキゾーストマイクの位置決めをするときは、そこでの空気の流れや熱源の方向に注意することが大切です」。

Chrisは、トランスミッションのギアから生じる共鳴音を録る重要性を強調します。特にラリーカーやレーシングカーで使用しているミッションのギアは、ストレートカットのギア(スパーギア)を使用していたり、シーケンシャルトランスミッションを積んでいます。「DiRTラリー2.0の全部とGRIDのレコーディングではSennheiser AMBEOマイクを使っています。これも本当に良いマイクで、トランスミッションから、ラリーカーが急発進した時のディファレンシャルの鳴きまで車内全体の音をよく拾ってくれます」。こうした音の作成に、ChrisはMagix SpectraLayersを使ってトランスミッションから聴こえる共鳴音を分離して取り出します。取り出した音はさらに編集を経てゲームのエンジン音等のシステムに組み込まれます。



エンジンとエキゾーストマイクの合計3本か4本からの信号が、ZOOM『F8n』のインプットに入ります。ゲームになくてはならないクルマの各種効果音として、エンジンとエキゾーストの音は『F8n』に搭載のTCXO(温度補償水晶発振器)による0.2ppmという高精度のタイムコードでシンクさせます。現状では、ゲームのオーディオメモリの容量は、車内のアンビソニック収録音もシンクさせるほどの余裕はないのですが、それが実現した場合にコードマスターは備えています。つい最近、ザントフォールトサーキット(オランダ)でシボレーコルベットC7-R GTEのレコーディングの合間に、ChrisはZOOM『H3-VR』をピットレーンの壁にセットし、ピットイン時の"おいしいサウンド"を狙っていました。Chris曰く、「嬉しいことに、ZOOMがこの小さくて最高なレコーダーを提供してくれたんです。コルベットがピットインした時の獰猛なサウンドそのものだけでなく、ピットウォールにはね返る音や、その周囲のパドックの音も含めて、これ以上ないほどの臨場感と生々しい音で録れましたね」。



レーシングカーの名車の数々の走行音を収録してきたChrisでも、相手がレア度の極めて高いヒストリックカーとなると、行き詰まってしまうこともあります。「とにかくレコーディングの許可が出ないんです。個人所有だったり、ミュージアムコレクションだったりで、だいたいは値が付かないほど高いんです」。そういう場合、Chrisは当該モデルの直前もしくは直後の年式でスペックが限りなく近いものを探します。今後も続々拡大する歴史的名車のサウンドアーカイブを構築するプロジェクトの一翼を担えたのは光栄なことだと前置きしつつ、Chrisはこうも明かしています。「往年のF1カーを数多くレコーディングできたことはラッキーでした。何しろ、これまで収録してきた中で最大の爆音カーでしたから」。レーシングカーの世界にも電気自動車が浸透しつつある中で、Chrisは古き良きモータースポーツのコンテンツやエンジンサウンドを求める流れが今後益々大きくなっていくだろうと見ています。

一方でChrisは、きれいに舗装されてどこまでもスムーズなサーキット以外の場所でもレコーディングをすることがよくあります。「例えば、交通を閉鎖した一般道とかダートトラックでゲリラ的にレコーディングせざるを得ない場合もありますね。そんな場合、こちらが音的に欲しい直線部分の長さが足りないこともあって、そういう時はちょっと苦労します。理想を言えば、路面陥没とかのないターマック舗装なら、直線で900mは欲しいところなんですが、路面の大きなうねりとか、小石とか、舗装の継ぎ目やひび割れなどはトラクションロスの原因になって、録音したものをチェックしていると、その音から路面状況が分かるんです」。

外から走行音を録る以外では、各車両のシフトアップやシフトダウンといったギア操作音とともに、Chrisは別の2つの要素も狙っています。「オンロードでは、エンジンが低回転からレブリミットまで回転が上がっていき、次々にシフトアップしていく音を狙い、オフロードではレブリミットから低回転へ減速してシフトダウンしていく音を狙うんです」。

こうしてレコーダーに収録した数々の音は、すべて彼のラップトップにUSB経由で収まっていきます。Chrisは次のクルマが待っている収録地へ向けて自分のベーシックキットをパッキングしています。そのベーシックキットとは、「歯ブラシとキンドル、マイクとケーブル、それとZOOM製品ですね」。




 

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